インタビュー

長尾 春花 (ヴァイオリニスト)

FCN音楽大使に就任いただく前の2010年夏、長尾さんの出身地・掛川市にて、音楽との出会い、ヴァイオリンを弾くようになったきっかけ、音楽家を志すようになるようまでの道のりなど、いろいろなお話を聞かせていただきました。



[インタビュー日時]
2010年8月1日 掛川市文化会館シオーネ・会議室
(聞き手:FCN理事 深谷茂予、写真:内山 文)


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Q1.
子どもの頃、ヴァイオリンを弾こうとしたきっかけを聞かせてください。

A1.
母がBS放送でオーケストラの演奏を観るのが好きでしたので、私も2歳頃から一緒に観はじめたそうです。そのときに、「これ弾きたい!」ってコンマス(コンサートマスターの略:第1ヴァイオリン)を指差したそうです。
母は、音大時代に友だちがヴァイオリンを弾いているのを見て、難しい楽器だと思っていたんですね。だから、この楽器は「耳がとてもよくないと出来ないからやめておこうね」と受け流していたんですが、一年くらいずっと私がしつこく言い続けたので、とうとう弾かせてもらえることになりました。最初にはじめたのは3歳です。


Q2.
いろいろある楽器のある中でヴァイオリンを弾こうと思ったのは、その時にいいと思ったからですか?

A2.
小さすぎて覚えてないのですけど、たぶんオーケストラを観ててもヴァイオリンって言ったくらいですから、きっとよかったのだと思います。


Q3.
ヴァイオリンのほかは演奏しますか?

A3.
ピアノはずっとやっていました。ヴァイオリン以外では、今でもピアノを弾いています。現在は、大学で副科ピアノと副科ヴィオラも専攻していて、副科ヴィオラのレッスンがある日はヴァイオリンとヴィオラのそれぞれのケースとかばんを持っての大変な荷物での通学です。


Q4.
ヴァイオリンの一番の魅力はなんでしょうか? どういった所を聴いてほしいか、聞かせてください。

A4.
私が魅力だと感じるのは、首のところに楽器が直接ふれているので、振動が全身に伝わって、声帯の位置というか、声と同じように音が出るのが魅力だと思っています。
「ここを聴いてもらいたい」というのは、そうですね・・・。人の声と同じように、音を膨らませる事ができますし、もちろん呼吸もしながら、語りかけたり、歌ったりとかが、より表現出来るので、語りかける音色を聴いて頂きたいし、聴いて下さる方々の少しでも心の奥底に届く音色を目指しています。



Q5.
プロの演奏家を目指して今も東京藝大で学んでいる最中だと思いますが、何歳の頃からプロの演奏家になりたいって思いましたか?

A5.
プロというのが、どこからプロをいうのかわからないですけど、私はプロの演奏家になりたいというよりも、もっと音楽の勉強をしたいと思って現在藝大に通っています。でも、たぶん習いはじめの頃から「ヴァイオリニストになる」と、思っていたようで、「私はヴァイオリニストになるんです」と言っていたみたいです。先生が「どうしよう!?って思った」とおっしゃっていましたので(笑)


Q6.
2歳か3歳の頃にですか?

A6.
はい。私は結構話し始めるのが早かったみたいです。
小さい頃は、絵を描くと、必ずヴァイオリンの絵を描いていたそうです。自分がヴァイオリンを弾いて舞台に立っている絵を描いていました。お皿の絵を描いても、お皿にヴァイオリンが描かれていたり、蝶々の絵を描いても、蝶々がヴァイオリンを弾いていたり、何の絵を描いてもヴァイオリンが絵柄に入っているんです。
幼稚園の時に、絵画の教室にも通ってたんですが、工作で家を作っても、家のドアにヴァイオリンを描いていましたし、実際に工作でヴァイオリンを作ったりもしました。


Q7.
音楽の道を志すようになる過程の中で、どこかで、プロを目指していくという情熱や信念を持つきっかけとなる瞬間というか、それまでとは違い「本気モード」のスイッチがONになるようなタイミングというか、出来事や体験などがあったのでしょうか?

A7.
特にないですね。最初から本気モードです(笑)


Q8.
3歳の頃から本気モードですか?

A8.
そうですね。どこからか、それまでとは変わったっていうようなことは、特にないです。習っている先生も、その先生が新しい先生を紹介して下さり、私はずっとそんな中で今に至っています。


Q9.
練習が嫌だと思ったことはありませんか?

A9.
昔は特になかったですね。
今でも、基本的に自分自身でどうにかするしかないので、自分が悲しい時は自分で頑張るしかないと思っています。


Q10.
浮き沈みみたいなものとかは、なかったですか?

A10.
もちろん不安を感じる時はありますが、やはり好きなのでやっていけるというか、基本的に楽観的であまりナーバスにはならない性格なんですね。



Q11.
音楽の持つ力をどのように感じていますか?

A11.
音楽は、漢字で「音を楽しむ」と書きます。基本的には、人が楽しむために音楽はあるといえると思いますが、その中にはいろいろあります。ほんの一例ですが、情景を伝えたり、描写したり、たとえば、恋愛が表現されているとか様々です。そのように、いろいろな思いがあって、作曲者も音楽を残しています。その作品を、私たち演奏者が演奏するわけなんですが、やはりそういった気持ちを感じながら、私自身の経験はまだまだ浅いのですが自分の想いとかも含めて、聴いてくださる方々の様々な経験や感情と重なり合う瞬間があると思います。今、音楽を聴いている人が、演奏者を通して何百年前の人々とのコミュニケーションというか、そういった気持ちを共有できるところが音楽の凄いところだと思います。
作曲者が、曲を作った当時、どんな言葉で、どんな話をしていたかわからないですし、私も作曲者と同じ言葉をしゃべっているのではないですが、そういう気持ちでつながっているというか、やはり、音楽は国境を越えた言語といえる部分があると思います。


Q12.
曲が作られた歴史的背景とか、作曲者のことを感じながら常に弾いているのですか?

A12.
そうですね。歴史を調べたりとか、その背景だけじゃなくて曲の中に隠されているものがあったりします。たとえば、音の配列とか、いろいろ研究していくと、とても奥が深い世界です。


Q13.
長尾さんは、どのような音楽家になっていきたいか、または、演奏を通して何かを伝えていきたいといったビジョンをお持ちですか?

A13.
10歳頃にテレビでユネスコ平和芸術家の二村英仁さん(ヴァイオリニスト)のドキュメンタリーを観ました。それを観たときからずっと、私もユネスコ平和芸術家になるんだ!って思ったんです。活動の内容も勿論ですが、そういう心というか、人そのものが素晴らしいと思いました。二村さんは、自ら戦地や戦争があった場所に赴いて、音楽をやれるような状況ではない場所とか、普通にストリートでも演奏をしたりして、子どもたちが集まってきて本当に楽しそうにしているんですね。
ストリートというと、ストリートミュージシャンがマイクを通したりする事はよくあるんですけど、二村さんはヴァイオリンですが、クラシックでもそうやって場所を問わないで、それこそガレキの中でも演奏して、みんなに希望とか癒しを与えています。また、学校などの施設があるところでは、子どもにヴァイオリンを教えたり、そういう活動もしていて、とても感銘を受けました。私も、二村さんみたいになるんだ!って、ずっと言ったり、思ったりしていました。その後も、五島みどりさん(ヴァイオリニスト)が、国連ピース・メッセンジャーになられたニュースを観ましたが、ユネスコ平和芸術家以外でも、そういう活動をされている方もいたり、また、そのような名前をいただいて活動をされている方のほかにも、本当に素晴らしい演奏家がいることを知って、私もユネスコ平和芸術家、国連ピース・メッセンジャーに関わらず、音楽の力を最大限活かせるような芸術家になって世界平和に貢献できるような人間になりたいというのが、ずっと抱いている願いです。

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長尾さん、インタビューにご協力ありがとうございました。


[プロフィール] 長尾 春花 (ながお はるか)
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